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本物の野菜とは?2011年11月22日 18:09


雲ひとつない秋晴れの空です。

11月22日_朝

今朝は放射冷却の影響で、霜が降りていました。(+o+)

初霜

以前、『オクラの種』について書かせていただきましたが、今回は少し深く・・・

現在、農家の皆さんは毎年毎年、野菜のタネを購入しています。
「タネを採取して来年蒔いたらいいのに」と思われるでしょうが、ちょっと違います。

通常、野菜を栽培するというイメージでは、実が枯れるとタネが採れると考えますよね。実が成る時点で受粉しているので、枯れたら実の中にある種子を取り出して、また植えるものだと思いませんか?
ところが、いま流通している野菜のほとんどがタネができず、一代で終わる野菜なのです。
これを「F1種」と言います。

野菜の種類には「固定種」「F1種」に大きく分類されます。
「固定種」というのは、伝統野菜・地方野菜・地場野菜と呼ばれるもので、その地域の気候風土の中で何世代にも渡って選別・淘汰され、その地域の風土に合った品種として固定化したものを指します。
誠心園の「オクラ」もそれです。
例えば丹波では、黒豆や小豆等がその代表的な例です。同じ大納言小豆でも、丹波産のそれと北海道産では、形や大きさ、味や品質もまるで違います。
一方、「F1」というのは、生物学用語で、first filial generation
交雑技術によって生まれた第一代目の子を意味しており、日本語では「一代交配種」と呼ばれています。最近よく耳にする遺伝子組換え」とは、似て非なる物です。
一般的に多くの種苗会社が販売する、無理矢理掛け合わせた野菜のハイブリット・・・
いわゆる雑種です。
見た目が良くて、病害虫に強く、大量生産ができるように創り上げられています。
そして最大の特徴は「タネができない」品種の事なのです。
厳密に言えば「タネはできる」のですが、その種を使った二代目「F2」の野菜はまともに育ちません。

あれですよ、あれ。
昔、勉強したメンデルの法則です。

メンデルが行った実験材料の中で、法則発見につながった材料はエンドウマメでした。
彼は、エンドウマメの形質を見極め、対立する特徴的な形質(表現型)に目を付けました。
遺伝的に遠縁の系統を掛け合わせて作られた雑種は、元の両親より生育が早くなったり、大柄になったり、収量が多くなったりすることがあり、この現象を 雑種強勢(ヘテロシス=heterosis)と言います。「雑種強勢」が働くよう、雑種にされて販売されているタネがF1で、F1種の登場により、日本の野菜生産量は増加しました。雑種化する前の昔のタネ(これが固定種です。F1の両親が、遠縁の二系統なのに対し、両親とも同じ単一の系統なのです)からF1への変化は、生産性の向上という点では画期的な出来事でした。

※メンデルの第一法則「優劣の法則」により、異なる形質を持つ親をかけ合わせると、その第一代の子(F1=雑種第一代)は、両親の形質のうち、優性だけが現れ、劣性は陰に隠れます。あらゆる形質でこの優性遺伝子だけが発現するため、交配種野菜は、一見まったく同じ形に揃います。
 反面、交配種野菜から種を採ると、優性形質3に対し、1の割合で隠れていた劣性形質が現れます。(メンデルの第二法則「分離の法則」)野菜の場合、発芽速度、草丈、葉色、根群、果色はじめ、あらゆる形質で劣性遺伝子が分離して顔を出すため、F1から自家採種したF2世代は、見るからにバラバラの野菜になってしまいます。(F3世代は当然もっとバラバラです)
 念の為、付け加えると、ここで話している優性と劣性とは、どちらかがもう一方より優れた性質であるということではありません。異なる二者を掛け合わせた時、表面に出る方を優性、隠れる方を劣性と解釈するだけですので、お間違えないよう。


花_01


そして、この「タネができない」が大きなポイントなわけで、もし自家採取で上手くいかないのであれば、ずっと種苗会社から毎年買わなくてはならない。
それは種苗会社が売り上げを伸ばす一番簡単な方法ですよね。
ついでに化学肥料を多く使わないと、美味しい野菜ができないのも、売り上げ増加に貢献します。
しかし、このF1種は常に揃った品質の野菜ができ、生育も早く収量も多く、生産農家にとっては栽培計画が非常に立て易く、歩留まりも良いというメリットもあります。
ん~悩ましい・・・
とにかく、味は良いが大きさや形も不揃いな固定種の野菜と比べて、F1種は大量生産に向いていることから、戦後の種苗業界は競ってF1種を開発するようになったのでしょう。

今も、世界の大手種苗会社や農薬メーカーは、資本・業務提携あるいは企業買収等により、F1種や遺伝子組み換え種の開発競争に躍起です。
こうした現実の中、野口種苗研究所のように、在来種(固定種)を守ろうという運動も地道に行われています。

切り株


どっちが良い!?誰が悪い!?
って訳ではありませんが、そんな現代農業への再考が必要なのかもしれません。


 

 

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